大田区の空き家対策|相談窓口・条例・使える制度の選び方【2026年】
公開日:
最終更新日:
大田区の空き家対策は、区の住宅・空家相談窓口を入口にして、区独自の条例と判定基準、目的別の助成、地域貢献活用という順に選択肢を絞り込むと決めやすくなります。空き家であれば誰でも使える一律の補助金があるわけではなく、建物の築年、構造、所在地区、今後の使い道によって使える制度が変わります。
大田区の制度は担当課ごとに分かれ、工事契約前の申請や年度ごとの締切があるため、順番を誤ると使えたはずの助成を逃します。この記事では、大田区で実際に取れる対策と使える制度を整理し、どの順番で動けばよいかまでまとめます。
目次
大田区の空き家の現状と区の対策方針
大田区の空き家は令和5年住宅・土地統計調査で48,880戸、空き家率は10.8%です。総住宅数451,460戸に対する割合で、戸数では東京23区のなかで世田谷区に次ぐ規模になります。
空き家率だけを見ると全国平均より低い水準ですが、戸数が多いため区内で対応が必要な物件は相当数にのぼります。区は平成28年7月に大田区空家等対策計画を策定し、令和3年7月に改定しました。
| 区分 | 総住宅数 | 空き家数 | 空き家率 |
|---|---|---|---|
| 大田区 | 451,460戸 | 48,880戸 | 10.8% |
| 東京都 | 8,201,400戸 | 896,500戸 | 10.9% |
| 全国 | 65,046,700戸 | 9,001,600戸 | 13.8% |
この改定では、相談体制の充実、所有者への助言と支援による適切な維持管理と有効活用、公益的な活用と発生予防の3点が柱に据えられました。窓口の一本化と専門団体との協定は、この方針を形にしたものです。
空き家の初期対応や、売却と解体を比べるときの一般的な考え方は空き家対策の基本的な進め方で整理しています。ここからは大田区に固有の窓口と制度に絞って説明します。
大田区の空き家相談は住宅・空家相談窓口から始める
大田区の空き家相談は、大田区役所7階にある住宅・空家相談窓口が入口になります。建築、法律、不動産、福祉の各分野の専門家と連携し、空き家の困りごとへワンストップで対応する窓口です。
| 窓口 | 大田区 住宅・空家相談窓口(大田区役所7階) |
|---|---|
| 電話 | 03-5744-1348 |
| 受付時間 | 午前8時30分から午後5時まで(土日祝日・年末年始を除く) |
| 相談方法 | 来所または電話 |
住宅・空家相談窓口で相談できること
維持管理から相続、売買、樹木の管理まで、空き家に関する幅広い相談を受け付けています。どの分野の問題か切り分けられない段階でも、状況を伝えれば担当や専門団体へつないでもらえます。
- 空家のリフォームや解体など建築全般
- 空家の利活用と既存住宅の建物調査
- 相続、紛争の解決、相続登記、成年後見、財産管理
- 敷地境界、売買や賃貸
- 樹木の管理と日常の維持管理
- 近隣の空家で困っていること
空家総合相談会で専門家に直接相談する
電話や窓口では解決しにくい専門的な内容は、毎月第2木曜日に開かれる空家総合相談会で専門家へ直接相談できます。1組30分程度の予約制で、窓口または電話で事前に予約します。
令和8年8月は第1木曜日、令和9年2月は第3木曜日に振り替えられます。年に1回は日曜日の開催も予定されているため、平日に区役所へ行きにくい場合は日曜開催の回を狙う方法があります。
協定を結ぶ専門団体に直接相談する
大田区は空家等対策に関する協定を専門団体と結んでおり、区の窓口を経由せず各団体へ直接相談する方法もあります。無料で受けられる相談の範囲は団体ごとに違うため、問い合わせの際に確認してください。
- 建築:東京都建築士事務所協会大田支部、東京建築士会大田支部空き家対策部会
- 法律・登記:東京弁護士会、東京司法書士会大田支部、東京土地家屋調査士会大田支部
- 不動産:東京都宅地建物取引業協会第五ブロック(大田区支部)、全日本不動産協会東京都本部城南支部
- 福祉:大田区社会福祉協議会
- 維持管理:NPO法人空家・空地管理センター、大田造園協会
- 大田造園協会とNPO法人空家・空地管理センターは、空家総合相談会には参加しません
大田区独自の条例と管理不全空家の判定基準
大田区には、国の空家法とは別に区独自の管理条例と管理不全空家等の判定基準があります。危険が生じるおそれがあれば区が緊急の措置を取り、勧告を受ければ土地の住宅用地特例が外れて税負担が大きく変わります。
大田区空家等の適切な管理の推進に関する条例
大田区は令和4年6月30日に「大田区空家等の適切な管理の推進に関する条例」を施行しました。風水害時など、空家に起因して危険が生ずるおそれがある場合に、区が必要最低限度の緊急安全措置を取れるようにしたものです。
所有者が遠方にいてすぐ動けない状況でも、区が応急的に危険を抑える場合があります。条例があっても管理責任は所有者にあり、管理不全が原因で被害が出れば損害賠償責任を負う可能性もあります。
管理不全空家等の判定基準と住宅用地特例
大田区は特定空家等の発生を予防するため、空家法第13条第1項の管理不全空家等について区独自の判定基準を定めています。国土交通省のガイドラインを基本にしながら、判定しやすいよう項目を整理したものです。
| 大項目 | 主な確認対象 |
|---|---|
| 建築物 | 屋根、外壁、建具など建物の部位の損傷 |
| 外構(樹木) | 門、塀、樹木の繁茂や越境 |
| 擁壁 | 擁壁の変形やひび割れ |
| その他 | 景観、衛生、環境保全、相続人の有無 |
判定は項目への該当だけで決まるものではなく、立地、周辺環境、損傷箇所の位置を考慮し、周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度から総合的に行われます。管理不全空家等と判定されて指導を受けてもなお放置し、特定空家等になるおそれが大きいと認められると、勧告が行われる場合があります。
勧告を受けると固定資産税等の住宅用地特例が受けられなくなり、土地の固定資産税と都市計画税が大幅に増額します。建物を残したまま置いておけば税負担が軽いままとは限らない点に注意してください。
大田区の所有者が使える制度と助成
大田区には空き家であれば誰でも使える一律の補助金はなく、目的別の条件型制度に分かれています。解体や耐震改修の工事助成、売却時の税特例に必要な確認書の交付、賃貸活用の借上げ制度が主な選択肢です。
| 制度 | 向いている状況 | 区の担当 |
|---|---|---|
| 木造住宅除却工事助成 | 旧耐震の木造住宅を解体したい | 防災まちづくり課 |
| 不燃化特区の老朽建築物除却助成 | 対象地区で老朽家屋を除却したい | 防災まちづくり課 |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 相続した空き家を売り3,000万円特別控除を使いたい | 建築調整課 |
| 低未利用土地等確認書 | 低額の土地等を譲渡し100万円控除を使いたい | 建築調整課 |
| マイホーム借上げ制度 | 売らずに貸して収入を得たい | 住宅政策担当 |
| 空家等地域貢献活用事業 | 地域活動の場として公益目的で活かしたい | 住宅・空家相談窓口 |
解体・耐震・不燃化に関する助成
昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅を解体する場合、木造住宅除却工事助成の対象になる可能性があります。助成の基準になる費用は、実際の除却工事費と、面積単価39,900円に延べ面積を掛けた額のうち低い方です。
大田区内中小企業者と直接契約する場合は3分の2で上限100万円、それ以外の業者では2分の1で上限75万円になります。令和8年度から限度額が引き上げられ、発注先の違いによる上限額の差は25万円です。
- 大田区内中小企業者は本社が区内にある法人や個人事業を指し、区外に本社がある会社の区内支店や営業所は含まれません
- 交付決定後に契約する必要があり、先に契約すると対象外になります
- 申請には年度ごとの締切があり、耐震コンサルタント派遣を先に受ける工程が入ります
不燃化特区の対象地区では、老朽建築物除却助成も使えます。旧耐震基準の木造住宅を所有して除却する個人または中小企業者が対象で、助成額は最大150万円、羽田二・三・六丁目地区で未接道建築物を除却する場合は最大200万円です。
対象条件、年度ごとの申請締切、申請から工事までの工程は、大田区の空き家解体補助金で整理しています。
売却時の税負担を軽くする確認書
相続した空き家を売る場合、譲渡所得から3,000万円を特別控除できる特例があり、適用には大田区が交付する被相続人居住用家屋等確認書が必要です。令和6年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上のときは、控除額が2,000万円になります。
| 確認書 | 控除額 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 3,000万円(相続人3人以上は2,000万円) | 相続した被相続人の居住用家屋とその敷地等の譲渡 |
| 低未利用土地等確認書 | 100万円 | 譲渡価格500万円以下、市街化区域や用途地域設定区域内等は800万円以下の低未利用土地等の譲渡 |
いずれも窓口は建築調整課(03-5744-1301)で、大田区が交付できるのは区内に所在する物件だけです。共有名義の場合は相続人ごとに申請が必要で、書類の確認に2週間程度かかります。
確認書の交付は特例の適用を確約するものではないため、要件そのものは管轄の税務署へ確認してください。譲渡時点で耐震基準に適合しているか、家屋を除却してから土地を譲渡するかで申請書類も変わります。
貸して活かすマイホーム借上げ制度
売らずに貸す方向で考えるなら、マイホーム借上げ制度が候補になります。一般社団法人移住・住みかえ支援機構が50歳以上の方の住宅を借り上げて転貸し、契約成立後は空室でも最低賃料が保証される公的な制度です。
利用には50歳以上であることと、住宅に一定の耐震性が確保されていることが条件です。区の案内窓口は住宅政策担当(03-5744-1416)で、制度の詳細や利用相談は同機構が受け付けます。
空家等地域貢献活用事業で地域の拠点として活かす
空家等地域貢献活用事業は、区内の空家や空室を公益目的で使いたい人と所有者を大田区がマッチングする仕組みです。老朽化を理由に貸すことを諦めていた物件でも、地域活動の場として使い道が見つかる場合があります。
公益目的として認められる活用分野
区が公益目的として示す分野は11あり、地域交流から子育て支援まで幅広く対象になります。自分の物件がどの分野に合うか見当がつかない段階でも、事例を見ると使い道を想像しやすくなります。
| 事業分野 | 活用事例 |
|---|---|
| 地域交流 | コミュニティカフェ、自治会や町会の活動を補完する拠点、集会室 |
| 防災危機管理 | 自治会や町会の防災倉庫 |
| 産業支援・産業振興 | コミュニティスペース、コワーキングスペース、シェアオフィス、サテライトオフィス |
| 国際交流・観光 | ゲストハウス、地域の文化や歴史を継承する拠点、まちの魅力を発信する拠点 |
| 福祉 | まちの食堂、デイサービス、障がい者の就労支援施設 |
| 居住支援 | 高齢者や障がい者、ひとり親などを対象としたグループホーム、シェアハウス、借上げ賃貸住宅 |
| 健康医療 | 医療機関と連携して行う事業の拠点施設 |
| 子育て支援 | 保育ママによる保育室 |
| 教育関連 | 生涯学習カルチャースクール、文化や芸術活動の場、アートギャラリー、放課後の学習支援教室 |
| まちづくり | 花づくりや清掃など地域の緑化と美化活動の拠点 |
| 全般 | 公益的な地域活動を行う団体の情報発信拠点、事務局スペース |
契約形態は賃貸借契約だけでなく、定期借家契約や使用貸借も選べ、期限付きにもできます。将来的に自分や家族が使う予定がある物件でも、期間を区切って貸す道が残ります。
登録前に確認する制約
この事業は公益目的での活用が前提のため、一般世帯が居住することを目的とする貸し方では登録できません。通常の賃貸活用を考えている場合は、別の方法を検討する必要があります。
- 区は所有者と利用希望者の間の賃貸借契約の交渉や仲介を行いません
- 契約締結は当事者間で行い、契約に関するトラブルも当事者間で解決します
- 住宅以外の用途に転用すると、土地の固定資産税と都市計画税が高くなる場合があります
- 建物の用途によっては、活用のために必要な手続きや工事が生じます
転用による税額の変化は、東京都大田都税事務所(03-3733-2411)が相談先です。公益目的以外で貸す、売る、収益物件として使うといった方向で相談先を探す場合は、大田区の空き家活用に対応する不動産会社が参考になります。
大田区で空き家対策を進める順番
大田区の窓口と制度は、住宅・空家相談窓口で全体像を確認し、物件が各制度の対象かを担当課で確かめ、年度締切から逆算して契約前に申請するという順番で使います。制度ごとに担当課と締切が違うため、方針を先に決めてから個別制度に当たると迷いが減ります。
- 名義、相続登記の状況、共有者の有無を確認する
- 住宅・空家相談窓口へ連絡し、現状と希望を伝えて選択肢を整理する
- 持つ、貸す、売る、解体するのどれを軸にするか家族で決める
- 築年、構造、所在地区を確認し、対象になりそうな制度を絞る
- 担当課へ事前相談し、必要書類と年度締切を確認する
- 見積もりを取り、交付決定を受けてから契約する
相続登記は令和6年4月1日から義務化され、相続を知ってから3年以内に申請しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。登記についての相談先は東京法務局(03-5213-1234)です。
方針が決まるまで時間がかかる場合でも、建物の管理は止められません。遠方に住んでいて定期的な換気や点検が難しいときは、大田区の空き家管理サービスで委託先を比較できます。
近隣の空き家で困っているときの相談方法
近隣の空き家で困っている場合も、相談先は住宅・空家相談窓口です。ただし空き家は所有者の私有財産であり、区が相談を受けてすぐに解体や樹木の伐採を行うわけではありません。
区は状況を確認したうえで所有者へ助言や指導を行い、改善されなければ管理不全空家等の判定や勧告へ進みます。すぐに片づく話ではないため、記録を残しながら相談すると経過を追いやすくなります。
- 気づいた日時と場所を記録する
- 建物の破損、樹木の越境、ごみの堆積など具体的な状態を書き出す
- 危険が及びそうな範囲を写真で残す
- これまでの経過や所有者との連絡状況を整理する
倒壊のおそれや部材の落下など、人身に危険が及ぶ切迫した状況では、区の条例に基づく緊急安全措置の対象になる場合があります。火災や不法侵入など緊急性が高い事象は、消防や警察へ直接連絡してください。
大田区の空き家対策でよくある質問
- 大田区に空き家なら誰でも使える補助金はありますか?
- 空き家であることだけを条件にした一律の補助金はありません。旧耐震の木造住宅の除却や、不燃化特区内の老朽建築物の除却など、築年や所在地区といった条件を満たす工事への助成が中心です。まず物件の築年、構造、所在地区を整理してから制度を確認してください。
- 空家総合相談会はいつ開催されますか?
- 毎月第2木曜日に1組30分程度で開催され、窓口または電話での事前予約が必要です。令和8年8月は第1木曜日、令和9年2月は第3木曜日に振り替えられます。年に1回は日曜日の開催も予定されています。
- 大田区は空家等管理活用支援法人を指定していますか?
- 令和5年12月13日に施行された改正空家特措法で創設された制度ですが、大田区は当分の間は指定を行わない方針を公表しており、今後必要に応じて見直すとしています。他の自治体の情報を見て支援法人へ相談しようと考えている場合でも、大田区では住宅・空家相談窓口と協定団体が相談の入口になります。
- 空家等地域貢献活用事業で普通の賃貸住宅として貸せますか?
- 貸せません。この事業は区内の空家や空室を公益目的で活用する取組みのため、一般世帯が居住することを目的とする場合は登録できません。通常の賃貸として貸すなら、不動産会社への相談など別の方法を検討してください。
- 解体業者と契約してから助成を申請できますか?
- 木造住宅除却工事助成は交付決定後に契約する必要があるため、先に契約すると対象外になります。見積もりを取る段階で担当課へ連絡し、申請の順序と契約のタイミングを確認してください。年度ごとの申請締切もあるため、解体を希望する時期から逆算して動くと安全です。
- 大田区外に住んでいても相談できますか?
- 相談できます。区は空家の所有者や区民からの相談に対応する体制を整えており、区外にお住まいの所有者も対象に含まれます。ただし個別の専門相談は制度ごとに対象や予約方法が異なるため、予約の際に確認してください。
まとめ
大田区の空き家対策は、住宅・空家相談窓口で全体像を確認し、区独自の条例と管理不全空家等の判定基準で放置した場合の影響を把握したうえで、目的別の制度を契約前に確認する流れで進めます。空き家であれば誰でも使える一律の補助金はなく、築年、構造、所在地区、今後の使い道で使える制度が変わります。
- 相談の入口は大田区役所7階の住宅・空家相談窓口(03-5744-1348)
- 専門家へ直接相談するなら毎月第2木曜日の空家総合相談会を予約する
- 勧告を受けると住宅用地特例が外れ、土地の税負担が大きく増える
- 解体助成は交付決定後に契約する必要があり、年度締切から逆算して動く
相談の現場で多いのは、解体か売却かを決めきれないまま数年が過ぎ、その間に雨漏りと樹木の越境が同時に進んでしまう状況です。大田区は敷地が狭く隣家との距離が近い住宅地が多いため、樹木の越境や外壁材の落下がそのまま近隣トラブルにつながりやすく、管理不全空家等の判定基準にある外構や擁壁の項目にも触れやすい地域特性があります。
方針が決まらない期間こそ、剪定と外観点検だけは止めずに続け、近隣の方へ連絡先を伝えておくと、区へ相談する段階で経過を説明しやすくなります。現状の整理から活用、売却、解体の比較まで相談したい方は、お問い合わせフォームから物件の状況をお知らせください。